コラム
実習で得た学びから考える「保育者のやさしさ」とは

保育実習に行くと、教室の空気や子どもの表情、保育者の動きなど、その一つひとつに多くの「学び」がつまっていることを実感するのではないでしょうか。
その中でも、多くの学生さんが気づくのが、保育者が子どもや周囲の人に向けている「やさしさ」です。
ただ、そのやさしさは、必ずしも「やわらかく話すこと」や「いつも笑顔で接すること」だけではありません。
今回は、「保育実習で感じた保育者のやさしさ」を軸に、保育の現場で大切にしたい考え方をまとめていきます。
実習の振り返りにも役立てながら、「やさしさって何だろう?」という問いを、少し深めてみましょう。
やさしさは「子どもの姿を理解すること」から生まれる
保育実習で「保育者が子ども一人ひとりの気持ちに寄り添う姿が印象に残っている」という学生さんも多いのではないでしょうか。
泣いている子、怒っている子、なかなか活動に入れない子…。
そんな子どもたちに対して、保育者はただ「どうしたの?」と声をかけるだけではありません。
・保育者は、子どものどんなところを見ている?
表情や歩き方、遊び方など、その子らしい小さなサインを丁寧に読み取りながら、今どんな気持ちでいるのかを受け止めています。
たとえば、
園に入れず玄関で立ち止まっている子に、しゃがんでそっと視線を合わせる
ケンカをした子ども同士が落ち着くための時間をつくる
なかなか言葉にできない子どもの隣に、何も言わずに座って同じ時間を過ごす
一見すると「特別な対応」に見えるかもしれませんが、その根底にあるのは「この子を理解しようとする姿勢」です。
・保育における「やさしさ」とは?
やさしさとは、怒らないことでも、甘やかすことでもありません。
子どもの気持ちを理解しようとし、丁寧に寄り添うこと。
実習で目にするこうした姿勢こそが、保育者のやさしさそのものだと言えるでしょう。
・見守ることも、大きなやさしさ
保育実習では、子どもが何かに困っていると、「すぐに手伝いたくなる」場面も多いですよね。
けれど保育者は、あえて手を出さず、子どもが自分の力でやり切れる時間を大切にしていることも少なくありません。
靴を履くのに時間がかかるとき、片づけがなかなか進まないとき、ブロックが思うように積み上がらないとき…。
そんな場面で、保育者はただ待つのではなく、「できる力を信じて見守る」というやさしさを実践しています。
やさしさというと「助けること」を思い浮かべがちですが、実は「見守ること」も、子どもの育ちを支える大切なサポートなのです。
子どもだけじゃない、保護者や仲間へのやさしさ
保育者のやさしさは、子どもに向けられるものだけではありません。
日々の関わりの中で、保護者や一緒に働く職員へも、自然と向けられています。
・保護者へのやさしさ
短い朝夕の時間でも、その子の良いところをひと言伝えたり、育児の悩みを抱えていそうな表情に気づいて声をかけたり。
運動会や発表会などの行事の場面で、うまくいかなかった子の保護者には「本番までたくさん頑張っていましたよ」と過程を伝えることも。
こうした一つひとつの積み重ねが、保護者との信頼関係を少しずつ築いていくのです。
・職員同士のやさしさ
忙しそうな先生にそっと声をかける、困ったときに自然と助け合う、家庭の事情で休まなければいけない時はカバーし合うなど、チームとして支え合うことも、保育の現場に欠かせないやさしさの一つです。
実習中に「職員室の雰囲気があたたかい」と感じた経験があるなら、それもまた、保育者同士のやさしさがつくり出しているものだと言えるでしょう。
「やさしさ」を育てるためにできること
保育実習を経験し、現場の様子を知った今だからこそ、学生のうちから意識してできることがあります。
・小さなやさしさを積み重ねる
友達の話を丁寧に聞くこと、誰かの困りごとに気づいたら声をかけてみること、そして、自分の気持ちにもやさしく向き合うこと。
こうした日常の何気ない行動の積み重ねが、そのまま保育の現場での関わりにつながっていきます。
・子どもの気持ちを想像する習慣をつける
絵本を読んだときや実習記録を書いているとき、子どもの何気ないつぶやきを聞いたときに、「この子はどうしてこうしたんだろう?」と立ち止まって考えてみましょう。
それだけでも、子どもを理解しようとする力は少しずつ育っていきます。
・さまざまなやさしさを知る
実習ノートの振り返りで、「今日見つけたやさしさ」を書き留めていくのもおすすめです。
実際に保育者がどんな関わりをしていたのかを振り返ることで、学びを自分のこれからの保育につなげていくことができます。
まとめ
今回は、実習で得た学びから考える「保育者のやさしさ」とは、どのようなものなのかについてお話ししてきました。
実習で出会う「保育者のやさしさ」は、決してひとつの形にまとめられるものではありません。
子どもの気持ちを理解しようとすること、できる力を信じて見守ること、保護者や仲間にあたたかく接し、言葉にできない思いをくみ取ることなど。
多くのやさしさが保育の現場にはあふれており、学生さんは実習を通して、その一つひとつを体験しながら学んでいきます。
やさしさは、完璧にできることではなく、子どもを大切に思う気持ちから、少しずつ育っていくものです。
実習で得た学びを胸に、ぜひ自分らしいやさしさを見つけていってくださいね。



